富士山ワイナリー

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株式会社富士山ワイナリー
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
418-0101
静岡県富士宮市根原宝山498
設立 2006年5月
業種 食料品
法人番号 5080101012213
代表者 代表取締役 シンガー アーネスト
資本金 1億2500万円
外部リンク https://fujisanwinery.co.jp/
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富士山ワイナリー
FUJISAN WINERY
店舗概要
所在地 富士宮市根原字宝山498
開業日 2007年(平成19年)5月18日
営業時間 10:00-16:00
最寄駅 富士宮駅
最寄バス停 道の駅朝霧高原
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富士山ワイナリー(ふじさんワイナリー、: Fujisan Winery)は、静岡県富士宮市にあるワイナリーで、地元および近隣の山梨県の自社畑で栽培された甲州ブドウからワインを造っています。ブドウ樹を感染させるリーフロールウイルスの研究を行い、ウイルスフリーのブドウ樹の育成に取り組んでいます。ワインは全国のレストランやオンラインショップおよび自社のカフェ、ワインショップで販売しています。[1][2][3]

歴史[編集]

富士山ワイナリーは、12歳で来日したアメリカ人、アーネスト・シンガーによって設立されました。[4]

世界各国のワインの輸入会社を経営している、当社代表のアーネスト・シンガーは山梨県のワイナリーから甲州種の絶滅の危機に瀕していることを相談され、2003年に 「甲州ワインプロジェクト」を立ち上げました。

2007年に朝霧ワインを設立しました。その後、会社名は富士山ワイナリーに改名されました。

甲州ブドウ[編集]

Koshu grapes growing in a Fujisan Winery vineyard with great view of Mount Fuji
富士山の絶景を望む富士山ワイナリーのブドウ畑で育つ甲州ブドウ

甲州は白ブドウで、数世紀前にシルクロードを経てヨーロッパから日本に持ち込まれたと考えられています。[5]DNA検査によると、甲州はヨーロッパのブドウ品種であるヴィティス・ヴィニフェラのハイブリッドです。[6]

2000年ごろ甲州の人気は年々低下しており、山梨県での栽培面積は50%以上減少し、2010年には最低記録に達しました。2003年ごろシンガーの立ち上げた「甲州ワインプロジェクト」は日本全国のワインメーカーを山梨に集めロバート・パーカー氏、デュブルデュー教授を招きシンポジウムを開きました。日本国営テレビに1時間のドキュメンタリー番組の影響もあり、甲州ワインブームが訪れ今や甲州ブドウは購入が大変難しくなりました。また、甲州の国際的な認知度が高まるにつれ、山梨県は日本一のワイン生産地となることができました。山梨県は栽培面積を増やし、2025年までに1,000トンの甲州ブドウの生産を目標にしています。[7]

他の日本のワインメーカーとの共同プロジェクト[編集]

辛口の甲州ワインに集中することを決め、グレースワインの三澤茂計など、他の日本のワインメーカーと協力しました。彼らはアイデアを交換し、多くの企業が関わるようになりました。そのうちの一部は山梨のワイナリーを中心にKoshu of Japanという組織として団結しました。[2]

デニス・デュブルデューとのワイン作り[編集]

ワイナリーの前で創業者アーネスト・シンガーと一緒にいるデニス・デュブルデュー(右)。

2003年、甲州種絶滅の危機を救うために、当時ボルドー大学醸造学部長ドゥニ・デュブルデュー教授を招聘しました。彼は甲州種がワイン用の品種「ヴィティス・ヴィニフェラ種」でなければ、ワインは造れないといいました。そこで、カリフォルニア大学デイヴィス校に甲州の葉を送りDNA鑑定を依頼しました。当時甲州種のゲノムが95%がヴィティス・ヴィニフェラ種であることが判明し、デュブルデュー教授はコンサルタントになることを引き受けました。[2]

甲州ブドウの皮は非常に苦いため、デュブルデュー教授は搾汁率を50%に制限しました。甲州の糖度は海外で栽培される品種に比べて低かったが、デュブルデューは発酵前に糖を加えず、アルコール度数が9.5~11%と自然のままのワインを造りました。彼は、ポルトガルのヴィーニョ・ヴェルデのように他にも同様のワインが存在し、受け入れられていると説明しました。[1]

2013年には、甲州のスパークリングワインの製造にも取り組みました。そのヴィンテージのドサージュ(瓶内第二次発酵後に加えられる糖分)は1リットルあたり2グラムにすぎませんでした。[8]

EUへの輸入承認[編集]

EUのワイン規制は日本よりも厳格です。[3][2][9]2007年まで日本のワインはEUに正規に輸出することはできませんでした。何故ならば、日本のワインをワインと認めることが出来る機関が日本にはなかったのです。シンガーは関係各省に問い合わせと働きかけをし、「独立法人酒類総合研究所」がEUの農業委員会が認めるラボに認定されました。そして、2007年12月にシンガーの造ったKoshu Cuvée Denis Dubourdieu 2006が輸出認定第一号となり翌2008年1月日本で初めてEUに輸出しました。[3]

その後、山梨県のワイナリーもつづいて輸出するようになりました[1]

ウイルスフリーのブドウ樹プロジェクト[編集]

中部大学が生産したウイルスフリーの甲州ブドウ樹が富士山ワイナリーの温室で栽培されています。

甲州のブドウ樹は、リーフロールウイルスなどのウイルスに感染することが多く、糖度が低下し、アルコール度数が12%以上になるのが難しいです。ウィルス非感染ブドウにすることによって、完熟した高品質のブドウを作ることができます。ウイルスフリーのブドウ樹の生産は、ワインの品質向上に大きな一歩となります。[10]中部大学と協力してウイルスフリーのブドウ樹を生産する長期プロジェクトに関与しています。ワイナリーの著者たち、中部大学および他の大学の著者たちは、ウイルスフリーのブドウ樹を作成するプロセスを説明する論文を発表しました。[11]ウイルスフリーのブドウ樹は、富士山ワイナリーの温室で栽培されています。[12]

カフェとワインショップ[編集]

富士山ワイナリーのカフェから見える富士山

富士山にいちばん近い富士山ワイナリーには、目の前に富士山の景色が見えるカフェがあります。

アクセス[編集]

周辺[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Hughes, Felicity, The Japan Times (2011年6月10日). “Koshu wine gets uncorked abroad”. 2024年5月20日閲覧。
  2. ^ a b c d Brown, Corie, The New York Times (2010年10月26日). “Japanese Wineries Betting on a Reviled Grape”. The New York Times. 2020年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年5月20日閲覧。
  3. ^ a b c Anson, Jane,Decanter (2008年2月6日). “Dubordieu-crafted Japanese white hits EU”. 2020年10月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年5月20日閲覧。
  4. ^ Jeffs, Angela, The Japan Times (2007年6月9日). “Koshu Project sets out to redefine Japanese wine”. 2024年6月2日閲覧。
  5. ^ Balmer, Etienne, The Japan Times (2022年10月30日). “The rural temple where winemaking equals worship”. 2022年10月30日閲覧。
  6. ^ Goto-Yamamoto, Nami; Sawler, Jason; Myles, Sean (October 21, 2015). “Genetic Analysis of East Asian Grape Cultivars Suggests Hybridization with Wild Vitis”. PLOS ONE 10 (10): e0140841. Bibcode2015PLoSO..1040841G. doi:10.1371/journal.pone.0140841. PMC 4619069. PMID 26488600. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4619069/. 
  7. ^ 山梨ワイン産地確立推進計画”. 2023年1月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月12日閲覧。
  8. ^ Akiyama, Miyako, Forbes Japan (2020年3月14日). “日本が誇る、世界レベルの甲州スパークリング|美酒のある風景”. 2021年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月24日閲覧。
  9. ^ Council Regulation (EC) No 753/2002 of 29 April 2002 laying down certain rules for applying Council Regulation (EC) No 1493/1999 as regards the description, designation, presentation and protection of certain wine sector products
  10. ^ The Chubu University Wine and Nihon-shu Project”. 2023年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月9日閲覧。
  11. ^ “Establishment of the optimal condition for shoot regeneration in Vitis vinifera 'Koshu'”. 生物機能開発研究所紀要. (January 1, 2022). https://elib.bliss.chubu.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=XC22000029&elmid=Body&fname=F01_022_048.pdf&loginflg=on&block_id=_296&once=true. 
  12. ^ 私達のプロジェクトと共同研究している㈱富士山ワイナリーを訪問しました。”. 中部大学 (2022年7月14日). 2023年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月9日閲覧。

外部リンク[編集]